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外科技術紹介

t-PA治療(水尾安一様 手記あり)

「突然の昏睡・けいれん・四肢の麻痺などを起こす急性脳梗塞の血栓溶解療法(t-PA治療)について」
血栓溶解療法とは脳梗塞は脳に酸素や栄養素を運んでいる動脈がつまって起こる病気です。
動脈がつまると、脳の神経は時間が経てば経つほどにどんどん傷んでしまい、ついには神経細胞が死んでしまい(壊死)元に戻らなくなります。
また、血流が低下し、時間が経つにつれ、壊死の範囲は広がっていきます。
壊死巣の周囲には血流が再開するとまた元に戻る部分があります。
そこで、脳の細胞が死んでしまう前に血管を詰めている血栓(血の固まり)を溶かし、血流を再開することで脳の働きを取り戻そうというのが、血栓溶解療法です。
動脈が詰まって間もないうちに、血液の流れを回復させれば、症状も軽く済みます。
ただし、壊死巣に血栓を溶かす薬を使って血の流れを回復させてやると、壊死巣に出血を起こす危険性も高いので(出血性梗塞)、この治療の適用には注意を必要とします。

<t-PAとは>
身体の中にはもともとプラスミンという酵素があります。プラスミンは前駆体であるプラスミノゲンから作られ、血栓を溶かす作用があります。
t-PA(tissue-plasminogen activator:組織プラスミノゲン活性化因子)は、プラスミノゲンの作用を増強することで血栓を強力に溶かす酵素です。
これまでの血栓溶解薬は投与しても、血栓を溶かす力は十分ではなく、血栓を溶かそうとしてたくさんの量を使うと全身で出血を起こしやすくなり、なかなかうまく治療ができませんでした。そこで登場したのが遺伝子組み換えにより作ったt-PA製剤です。t-PAは血栓自体に作用して血栓を溶かすため、血栓溶解療法に適した薬です。

<t-PA治療ができる方、できない方>
2005年10月から日本でもt-PA製剤が使用できるようになりました。ただ、この薬は血栓を強力に溶かすことで劇的に症状を改善させることがある一方で、出血を合併症としてひき起こすことがあり、投与に際しては十分な注意が必要とされます。
患者さんに投与できるかどうかについては、いくつかの前提条件があります。
まず、脳梗塞が起こってから3時間以内に、投与を開始できることが必要となります。
つまり、何時何分に症状が起こったか、もしはっきりしない場合には患者が何時まで元気でいたかを確認できることが必要です。
例えば、意識が悪かったりして、いつ症状が起こったか分からない患者さんでは、最後に正常だったことを確認できた時間が最終確認時間となります。その時間から3時間以上経っていたら、残念ながら投与することができません。
脳梗塞が起こった時間が分かる患者さんでは、その他の条件に合うかどうかの検査をする時間が必要となりますので、起こってから2時間位までに病院に到着していただくのが望ましいです。
したがって、脳卒中の症状が出たらすぐに救急車を呼んで、搬送してもらうことが大切です。

<t-PAの投与方法>
t-PAは体重で換算し投与する総量を計算します。静脈注射により最初に総量の10%を急速投与し、残りを約1時間かけて投与します。投与開始後24時間は、厳重に経過観察を行います。また、36時間は患者さんの状態をよく経過観察を継続します。

<t-PA治療の効果>
脳梗塞が起こってからできるだけ早くt-PAの投与を行う方が、効果が高いと考えられます。早い時期に血栓を溶かすことに成功した場合、急速に症状が改善し全く後遺症を残さない患者さんもおられます。一方で、t-PAを投与できたにも関わらず、残念ながら血栓が溶けず症状の改善がない患者さんもおられます。また、発症からt-PA投与までの時間が長く経過した場合には、脳出血を起こすこともあります。脳梗塞が起こってから3時間以上経過した患者さんにt-PAを投与しないのは、出血の危険性が高まるからです。また、脳梗塞の範囲が広い場合や太い動脈がつまってしまっている場合にも出血を起こしやすくなります。
t-PAが薬として承認された後に、その安全性と有効性について全国調査が行われました。その結果によると、t-PA治療を行うことにより、3ヶ月後に身の回りのことが介助なしに行える患者さんの割合は33.1%でした。
つまりt-PAを投与することで、3人に1人は日常生活をご自分で行うことができるようになりました。一方、症状が出るような頭蓋内出血(症候性頭蓋内出血)の頻度は、36時間以内が3.5%、3ヶ月後が4.4%、3ヶ月以内の全死亡率は13.1%、症候性頭蓋内出血による死亡率は0.9%でした。


当院でt-PA治療を受けられた患者様の手記

徳島市八万町  水尾 安一  男  65歳

【私の命を救ったのは、病院の主治医と血栓溶解剤“t-PA”。そして、妻の英断だった。】 

 平成24年12月5日午前、私は自宅トイレで突然意識を失い倒れた。しかし、前後の記憶は全くない。妻が私の異変に気付きドアの鍵を壊し、倒れている私を発見。119番通報し、救急車で掛り付けである高杉病院に搬送されたとのこと。
 トイレ内の状況は便器と壁の間に倒れており、頭が窓際に、脚はドア側に伸びていた。ドアの鍵は簡単に壊れたが、倒れた私の脚が「突っ支い棒」となり、内開きのドアを開くことが出来ず、救急隊員が私をトイレから運び出すのに相当な時間を要したと聞いた。
 救急車で搬送中、妻は市内中心部に有る救急指定病院の徳島大学病院及び県立中央病院を省みず、迷うことなく郊外にある高杉病院を搬送先に指名した。この決断が生死の分かれ目となった。
 救急隊の記録によれば、119番通報から私を運び出すのに相当、時間を要したにも拘わらず病院到着までの時間が僅か48分だったそうである。
 今回の病名は「脳梗塞;血管内凝固症候群」だと知った。以前に市民公開講座等で、発症3時間以内に「ある薬剤」を投与すれば命が助かることを事前に知っていた。そして、意識が回復した時、血栓溶解剤“t-PA”が投与され、それで助かったことを知り、改めて“t-PA”の薬効の凄さに感嘆した。“t-PA”は、正に「魔法の薬」だといっても過言ではない。
 その後、意識が回復した時、足からの点滴、酸素吸入器、尿道への管の挿入を初め、5本の管と繋がれ、両手首はベットサイドに固定され、私は自分に何か異変が生じていることを直感した。しかし、周囲に家族や顔馴染みの看護師さん達を発見し、初めて、ここは高杉病院だと認識した。
幸いにも、早期発見、早期治療だった為、後遺症は全く出ていない。
 ところで、発症直前の異変は全くなかったが、考えられる発症原因は二つある。先ず、前日の朝からウィスキーを飲酒していたこと。次に、妻の話によると、当日、トイレに入る前、マッサージチェアで首を鋭く振動させていたとのこと。(何となく記憶は有る。)
 何はともあれ、午後から外出予定だった妻が在宅していたことが私にとってラッキーだった。
 私は7年前にリタイアした無職の初老である。
 幸いにも私には、三人の主治医がいる。約20年程前から糖尿病で高杉病院内科(院長担当)を受診しており、その後、動脈硬化が進み脳神経外科(理事長担当)も併せて診てもらっている。更に、第三の主治医として別の医院の眼科医にも糖尿病関連の定期検査も受診している。
 私は、お酒をこよなく愛する人間である。最近、理由は不明であるが、好きな焼酎が飲めなくなりウィスキーに変更した。酒量は3日でボトルを空けていた。倒れる前日も朝から飲酒していたような微な記憶がある。タバコは禁煙していたが、最近復活した。今回の発症を機会に禁酒・禁煙を宣言する。今回の貴重な体験から得た教訓は次のとおりである。
① 主治医を持つ
② トイレのドアの鍵は掛けない。出来ればドアの開閉方式は外開きの方が良い。
③ 夫婦一緒の寝室。
④ 入浴も出来れば一緒の方が良い。但し、独り入浴の場合は家族が入浴者に対し常に注意する。
⑤ トイレ内を温かくする。
⑥ 出来るだけ一人で外出しない。
 最後に、高杉病院の理事長及び院長、そして、全職員の方々の献身的な治療・看護・介護等に対し感謝するとともに、徳島市東消防署救急隊の使命感に燃えた隊員の方々にもお礼を申し上げたい。更に、“t-PA”を開発した製薬会社にも敬意を表したい。
 助けて頂いた、この命、いつまでも大事にすることを決意した。そのことが、今回、全ての方々から受けた御温情に対する恩返しだと思う。感謝!

 

外科技術:2013年01月10日
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